委任、任意後見、死後事務委任

委任契約

相続の場面で締結する委任契約には、代表的には財産管理等委任契約があります。

財産管理等委任契約は、代理人を選任し、自分の財産管理や生活上の事務の管理等を委任する契約のことをいいます。

この契約を締結する場面としては、委任する人が認知症等になっていないため判断能力を有する方ではあるものの、病気や怪我で外出しづらく、自分で財産管理等をするのが難しくなった場合等が考えらえます。

財産管理等委任契約の注意点

代理人は、他人の財産を管理する等の強い権利を有することになります。
そのため、財産の使用用途等を書面で委任した人に定期報告するような契約内容にする必要があります。
これにより、委任した人が代理人を監督します。
代理人がどんなに信頼できる人であっても、後々、代理人が散財したのではないか等と他の相続人から疑いをかけられたりしないように紛争を予防する効果もあります。

契約の途中で、委任した人が認知症等になり、判断能力が不十分になってしまった場合、自身では代理人を監督できなくなってしまいます。
そのため、財産管理委任契約を締結した時点で、判断能力が不十分になってしまった場合に開始する任意後見契約を併せて締結する等の対策が必要になります。

任意後見契約

任意後見契約は、任意後見人を選任し、療養看護、財産管理に関する事務を他人に委託し、代理権を付与する委任契約のことをいいます。

この契約を締結する場面としては、委任する人が認知症等になっていないため判断能力を有しており、今は自分で財産管理等をできる状態であるものの、将来、認知症等により判断能力が不十分になってしまうことに備える場合等が考えられます。

任意後見契約の注意点

任意後見人は、他人の財産を管理する等の強い権利を有することになるので、任意後見人を監督する任意後見監督人を家庭裁判所が選任します。
任意後見人は、一定期間ごとに、報告書や財産目録等を任意後見監督人に提出する必要があります。

任意後見監督人は委任者が自由に選ぶことはできません。
選任されると、任意後見監督人に対して管理財産に応じて月額2万円~の費用を支払う必要があります。

また、任意後見契約は、公正証書によって作成する必要があります。
公正証書は、公証役場において、1万円程度の費用を支払って作成して貰います。

なお、認知症等により判断能力が衰えてきた方でも、医師の診断書や関係者の供述等を参考にして、公証人が契約締結能力ありと判断すれば、任意後見契約を締結することはできま す。
しかし、後から紛争になる可能性もあるので、判断能力が無い方は勿論、判断能力が衰えてきた方も、家庭裁判所での法定後見制度(成年後見、保佐、補助等)を利用することが考えられます。

死後事務委任契約

死後事務委任契約は、生前、代理人を選任し、死後において処理が必要となる様々な手続の履行を委任する契約です。

財産管理等委任契約や任意後見契約は、委任した人が生きている間のことを委任するものです。
それに対して、死後事務委任契約は、信頼できる人に、亡くなった後の諸手続、葬儀、法要、埋葬等に関する事務を委任する契約です。

この契約を締結する場面としては、葬儀や埋葬は、死後事務委任契約がなくても家族が対応してくれるので、相続人以外の方にそれらの手続を頼みたい場合等が考えられます。

死後事務委任契約と遺言との違い

遺言も死後のことを決める方法の一つです。
しかし、遺言では、財産を相続させることはできても、事務的な亡くなった後の諸手続、葬儀や法要埋葬等については、遺言の付言事項といって希望を示すだけの方法しかありません。
他方、死後事務委任契約は、生前に、誰にどのような事務をしてもらうのかを契約で決めることができる点に違いがあります。

死後事務委任契約の注意点

死後事務委任契約は、委任者が死亡したときから開始し、短い期間で多数の事務をしなければならないことが多いです。
そのため、代理人に対してある程度の報酬を払うことになると思われます。
亡くなった後の諸手続や埋葬等の費用についても、預託するか、遺産から充当する必要があるので、その準備も必要になります。

もう1人で悩まないでください。
弁護士が解決します。